もう何年も 連絡を取っていない
精神疾患持ちの元彼から昨晩
突然連絡があった。
「江口のりこに似てるって
言われないですか? 」
久々のメールがこれで私は戸惑った 。
そこは「台風大丈夫だった?」ではないのか。
江口のりこって誰だ ?
調べてみると、ちょいちょいドラマで見かける顔だ。
失礼だけど、あまり嬉しくはない 。
台風の心労と急な冷え込みで 調子の悪かった私はイライラし始めた 。
彼はメール相手を間違えているのでは ?
それともかなり精神的におかしなことになっているのだろうか ?
「どうした?」とだけ返信してみる。
「別にどうもしないですよ 。
ただ君は江口のりこに似てんなって
思っただけ 」
精神的にはまともなようだ。
「初めて言われた 」
しばらくこのやりとりと
距離を置きたかったので
モヤモヤした気分でお風呂に入る。
入浴後、スマホを見ると
「誰かに似てるって言われるの
気分悪いよね」
彼なりに何か察したのだろうか。
「月とチェリー っていう昔の映画を見て
僕の記憶の中の昔の君とそっくりな画面があってっていうだけの話 」
「月とチェリー」を探してみる 。
彼がどんな場面をさして 昔の私とそっくりだ と言っているのかは、わからない。
画像を見て まだ20代前半の若かりし日の記憶が 断片的に蘇る 。ひどい場面ばかりだ。
彼も映画の中のひどい場面を見て
「あの頃のあいつみたいだ」
と思ったのだろうか。
電話する気分でもない。躁転してるときは散々付き合わせるくせにね。
なんとなく気分を害してしまった私は
彼に素っ気なく
「この頃の江口のりこなら許す 。おやすみ」
とだけ返信をした 。
「いつか一緒に観れたらいいね 」
気のきいた返信のひとつでもできたら
良かったのだろうか 。
おかげで私は今日になっても
特に思い出したくもない
ぐちゃぐちゃに塗りたくられた
セピア色の記憶に 翻弄されている。